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ーー以下全部引用ーー
【進化する天下り】出勤しない「幽霊に」給料25万円振り込み
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20091221/plt0912211618002-n2.htm
「天下りは何人ですか」「この団体を通す必要がありますか」−。
先月行われた、行政刷新会議の事業仕分けで、税金無駄遣いの犯人として糾弾されたのが、独立行政法人、公益法人などの天下り団体である。
国と地方の借金は825兆円、GDPの1.7倍となり、IMFから警告を受けるほどになった。その犯人は、ずばり公共工事と天下り。本紙では官僚の天下りの新手口を紹介していく。
◇
先月、厚生労働省の独立行政法人で「隠れ天下り」が発覚した。独法では役員の数に制限があるため、「嘱託職員」といった肩書にして、こっそり役員並みの給与を払うのだ。文部科学省、総務省でも行われている。
しかし、「幽霊天下り」という手口はまだバレていない。出勤しない天下り官僚に、給料だけが自動送金されるのだ。
私は、厚労省の天下り先である、日本労働研究機構(現在は独立行政法人労働政策研究・研修機構)で10年間、働いた。経理部にいたときに、天下りの裏金事情を知る。
私は毎月、人事課から渡される給与簿をもとに振込み依頼書を作り銀行に渡していた。職員はわずか150人の小所帯。全員がよく知った顔だ。が、中に、知らぬ名前があった。T・A氏。職員ではない、顔を見たことがない。だが、「参与」となっていて、毎月きっかり25万円もの金を振り込まなければならない。
調べてみると、厚労省のキャリア官僚から、関西の国立大学に天下っていた人物だった。これでは東京にある私のいた法人には通えるはずがない。幽霊天下りだ。
あるとき、そのT・A氏がやってきた。
「やあ、僕がここに来るのは一年ぶりだな」
私は心底頭にきた。官僚OBというだけで、一切働かずに天下り団体から月25万円の小遣いをもらえるのだ。おそらく、奥さんには内緒に違いない。それくらいあれば、愛人を囲うこともできる。
こんな妄想がふくらむのも、私が別の天下り官僚からセクハラを受けていたからだ。
「君と一緒に出張したら、セクハラしない自信はないな」
と言われながら体中をなめるように見まわされ、タイに同伴出張をほのめかされた。断ると2カ月後に別の部に飛ばされたのである。
天下り役員らは、個室に秘書を呼び入れ、囲碁の相手をさせたり酒盛りをしたり。さらに月1回、金曜日の午後、厚労省の各団体に散らばる天下りを集め、囲碁大会を行っていた。
事業仕分けでは、国から受注した仕事を下請けに丸投げして上前をはねる「中抜き」が問題になった。その上前が遊んでばかりいる役員の平均年収1600万円に消える。
官僚は、あの手この手、いろいろな方法をつかって、税金から不労所得をせしめている。辞退する官僚もいるが少数である。
次回は、既得権の番人、天下り弁護士軍団について書く。
(ジャーナリスト・若林亜紀)2009.12.21
【進化する天下り】「弁護団」に顧問料払っても法律相談しない理由とは
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20091222/dms0912221603005-n2.htm
既得権を守るのは官僚の十八番。文字通り、彼らを守る「天下り弁護団」が存在する。
厚生労働省の天下り団体、日本労働研究機構で経理をしていたとき、私はある定期送金が気になった。K・I法律事務所への顧問料、月々10万5000円。
機構では、法律相談を別のU法律事務所に頼っており、当時の私が知る限り、K・I法律事務所に相談をしたことはなかった。
実はK・I法律事務所の所長K・I氏は元労働省のキャリア官僚だそうだ。それなので、つきあいで顧問契約を結んでいるらしい。これは厚労省OBへの利益供与だ。それにしても、K・I法律事務所に法律相談をしないのはなぜか。どうも、レベルが今ひとつらしいと私は後に知る。
別に経理部で噂の種になっていたのは、NHK(日本放送協会)から天下ってきた役員T・I氏の交際費である。機構ではマスコミ対策で、役員のうち、一名をマスコミから迎えていた。T・I氏は機構の役員になってからもときどき古巣NHKの番組に出演し、機構の調査研究結果を紹介した。放送が終わると「今日も番組で機構の宣伝をしてきた。民放のコマーシャルに換算すれば、数千万円分の広告効果がある」と自慢し、高い接待費の請求書を押し付けるのだった。
役員在任は4年間で、その間、役員報酬と退職金合わせ9000万円の報酬が支払われた。NHKのニュース枠はゴールデンタイムでない限り、天下りや接待で買えるものらしい。
さて、K・I法律事務所の仕事ぶりを知る機会が、ついに訪れた。
私は、このような天下りによる税金食いつぶしの実態を週刊誌に内部告発して2001年に退職した。すると、機構は「職場の秩序を乱した」として退職金を減額してきた。公務員には不正告発の義務が課されており天下り法人も準ずる。機構の言い分は明らかに違法だ。
私は、東京簡易裁判所に調停を申し入れた。その場に総務課長とともに訪れたのがK・I氏だ。
「退職金減額は私がアドバイスした。調停には応じない。訴訟なら受けてたつ」
仕方なく私は提訴した。お金がなかったので、弁護士を立てずに、法律を調べ、本人訴訟で望んだ。実は、全国の地方裁判所で行われる訴訟の6割はどちらかが弁護士を立てない本人訴訟という。K・I氏はなんと、事務所の弁護士を従え、3人で応戦してきた。勤務態度が悪かったから退職金を減らしたなどと、事実でない主張を連ねた「準備書面」を送られ、私はストレスにつぶされそうになりものすごく辛かった。法廷では、K・I氏らが法律知識を駆使して代わる代わる私を責めた。さすがに一審は私が敗訴、でも二審で逆転勝訴し、最高裁で確定した。
素人の本人訴訟に弁護士3人がかりで負けるとは…。さすがのレベルである。
その後、私は小さなニュースでK・I法律事務所の名を目にした。農林水産省のOBを新たに雇い入れ、農水省とも法律顧問の契約を結んだとの記事だった。
(ジャーナリスト・若林亜紀)2009.12.22
【進化する天下り】ノーベル賞学者を「弁護団」として囲い込みか
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20091224/dms0912241613009-n2.htm
「世界一を目指す理由は何があるんでしょうか」
行政刷新会議の事業仕分けで、次世代スーパーコンピュータ開発予算をめぐる蓮舫議員のセリフである。
ノーベル賞学者らが記者会見を開いてこれに抗議、鳩山首相も耳を傾け、予算はめでたく復活した。
しかし、やはりスパコンは凍結すべきなのである。テレビが蓮舫議員の映像を流すだけで、論点は伝えないために生じた誤解がある。
まず、スパコンも天下りビジネスになっているのではないか、ということだ。
次世代スパコン開発は文科省の天下り団体、独立行政法人理化学研究所(理研)が行っている。これまでに545億円の国費を投入し、今後さらに700億円を見込む。しかし今春、共同開発をしていた日立製作所、NECが撤退を表明し、富士通のみ残った。このままなし崩しに続けるより、いったん凍結して戦略を練り直すべきというのが論点だ。
そして「予算を減らすな」の大合唱をした科学者や、天下り官僚が予算に深くかかわっている。
批判の中心となった、ノーベル化学賞受賞の野依良治氏は、理研の理事長、ノーベル生理学賞の利根川進氏は同幹部だ。理研の役員には文科省、農水省、財務省OBが名を連ねている。国の科学予算うんぬんより、自らの職場の予算削減に反対しているに過ぎないのではないか。
ノーベル物理学賞の小林誠氏もやはり文科省の独法である日本学術振興会の理事だ。文科省がノーベル受賞後の学者に天下り法人のポストを差し出し、「天下り弁護団」として囲い込んでいるのではないか。ノーベル化学賞のサラリーマン、田中耕一氏が会見の場には姿を見せなかったことが象徴的だ。
また、衆議院調査局によれば、富士通には、昨年度、国家公務員OBが31名も天下っている。
次に、予算凍結を主張したのは、素人の蓮舫議員ではなく、「スパコンの申し子」といわれる金田康正東大教授だ。それも、今の開発体制は世界の流れから外れ、メーカーから見放されたものなので、見直すべしという趣旨だった。
「本件では、10ぺタ級(1ぺタ=100万ギガ)のスパコンを開発しているが、そんなものを使うことはまずない。それより、1ぺタ級のスパコンを全国に10台置いてくれたほうが研究者はずっと助かる」
金田教授は、国産スパコンを使って20年以上、円周率計算の世界記録を塗り替えてきた「スパコンの申し子」だ。
議論は続く。
「アメリカも10ぺタを開発している。中国が1ぺタ級を開発した。1位をとっても一瞬だ」
理研の答えは弱弱しい。
「経済合理性にはなじまないが、1位を目指すことで国民に夢を与えることが必要です」
かくして、「スパコンの国家戦略について公開の議論で再構築すべき」との評決になったのに、議論なしで予算が復活した。
(ジャーナリスト・若林亜紀)2009.12.24
【進化する天下り】民主党の天下り禁止は抜け穴だらけ
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20091225/dms0912251620005-n2.htm
脱官僚を掲げていた民主党が、斎藤次郎氏を日本郵政社長に、坂篤郎氏を副社長にした。いずれも大蔵省OBだ。この際、平野博文官房長官は、「大臣と官庁OBによる就職あっせんは天下りではない」とムリな言い訳をした。
だが、「すでに天下った省庁OBが後輩を呼び寄せて天下り指定席となっていく例が多い」とは政権交代前の長妻昭厚生労働大臣の国会発言。だから、平野長官の言い訳は事実上「天下り解禁」と同義だ。
元内閣公務員制度改革本部の官僚だった、政策工房社長の原英史氏はこう皮肉る。
「事業仕分けで、『この公益法人に天下りは何人いますか』と聞かれたら、官僚は『鳩山政権の天下りの定義によればゼロです』と答えればいいんですよ」
例えば、事故米転売問題で引責辞任した農水省の白須敏朗元次官のケース。彼は農水省所管の社団法人「大日本水産会」の会長に天下り、年収は1860万円だ。
白須氏が天下った当時の石破茂農水相は、省として押し込んだのではなく、受け入れ側の判断であると述べた。水産会側は、私の取材に対し、「農水省OBである中須勇雄前会長が引っ張った」と明言している。民主党の定義では、これは天下りでないことになってしまうではないか。
原氏の皮肉は、言い得て妙。来年の公益法人仕分けで、本当にそんな応酬がくり広げられれば、官僚を応援しよう。
さて、私も生々しい天下りあっせん現場を見たことがある。
厚生労働省の特殊法人、日本労働研究機構(現独立行政法人労働政策研究・研修機構)に働いていた2000年のことだ。
ある日、厚労省の元局長が訪れた。厚労省から出向していた機構のI部長が案内する。職員の好奇の目が2人に注がれた。というのも、この元局長はかつて機構に部長として出向し、その後は本省で出世を極めていった。そんな大物が、わざわざ郊外にある機構を訪れるとは奇異な感じがしたからだ。
古参の職員が声をかけた。「おひさしぶりです。今、どちらに」。元局長は「役所を辞めて別のところにいるんです。今日はちょっと見学に来ました」と答えた。
2人は、やがてI部長の個室にこもった。天下り法人では、部長で個室をもらえる。そこで何の話をしていたのか。
半年後の人事異動で、その答えらしきものが分かった。I部長が、元局長がいた局の所管する財団法人の常務理事に天下っていったのだ。私を含め、職員の間で「あのとき、元局長は大物OBとして、I氏の天下りあっせんの相談に乗ったか、天下り先の内定通告に来たのではないか」と話題になった。本人は否定するかもしれないが…。
厚労省や天下り法人では、毎年秋から冬にかけ、有力幹部の子分が、親分の元を訪れ、ひそひそ人事の相談をする。猟官活動と呼ばれる。
官僚OBの人脈は地下茎のように国の隅々にまで張り巡らされており、天下り先は、大学、司法、政治家など多岐に渡っている。これが日本の官僚支配の証なのだ。
(ジャーナリスト・若林亜紀)2009.12.25
【進化する天下り】労組抵抗を抑え人件費抑制 できなければ詐欺だ!
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20091228/dms0912281253012-n2.htm
「世間から批判されて、慣れない職場で働く天下りはわれわれもいやだ。だがそれなしではやっていけなかった」
国土交通省の管理職ユニオンの坂内亮中央執行副委員長は言う。同労組は、1998年の設立以来、一貫して天下りの廃止を訴えてきた。
ひとえに天下りといっても、5000万円以上の退職金をもらい、年俸1550万円で天下りを繰り返すキャリアは、全国家公務員のわずか4%に過ぎない。残りの96%は、どうなのか。
例えば自衛官。初老の元自衛官の男性は、「S学園の事務は、年収460万円。すごいだろう」とうらやましそうに話した。
本人は大手証券会社で、コピーや連絡などの営業事務をしている。陸上自衛隊の定年はおおむね54歳。体が資本の仕事のため、定年も早い。退職金は1500万円ほどだ。自衛官の退職後の仕事は、学校などの警備員、企業の総務、空港の売店、運送業、工事現場の交通整理などがあるが、再就職後の年収はキャリアとは一桁違う。
先の国交省では、再任用も増えている。部分年金の支給が始まる年齢になるといったん退職して、役所にアルバイトとして働く制度だが、年収は年金と合わせ400万円ほどに過ぎない。しかし、それこそが世間並みの相場だろう。
とにかく「税金の無駄撲滅」というなら、公務員にからむ総人件費を抑制するべきなのだ。天下りをなくしても、年功序列と終身雇用が残って、総人件費が増えたら意味がない。
仙谷大臣は、今月、公務員制度改革推進本部の人事を刷新した。民主党マニフェストによれば、改革の目標は、公務員にスト権を与えることと、天下りをしなくて済むよう定年まで働けるようにすることである。そのかわり、50歳代の賃金を下げることが既定路線だ。余剰人員のリストラ、幹部公務員の公募に踏み込む可能性もある。
しかし、これに立ちはだかるのが、労組だ。
民主党は日本最大の労組の上部団体、連合を強力な支持母体とする。民主党国会議員には連合の組織内議員が58人おり、そのうち、平野官房長官ら7人が入閣している。さらに、連合と深いつながりがある天下り団体が存在するのだ。
連合は1989年、国際労働財団というファミリー法人をつくった。ここに厚労省から年3億円が交付されている。財団の理事長は連合前会長の高木剛氏。以下理事の14名が労組出身者で固められている。
同様の団体に日中技能者交流センターがある。理事長は、初代が元日教組の委員長で総評議長を務めた槙枝元文氏。今は連合の元会長代行、人見一夫氏だ。
天下りポストと交付金を使い、労組幹部を労働貴族に仕立てることで連合をてなづけ、ひいては与党を支配しようとする官僚の“ワナ”ではないのか。彼らの力をそぐには、軍資金を絶つこと、すなわち、天下りとムダ撲滅による歳出減が必要だ。
果たして、政府は労組の抵抗を抑え、人件費抑制を含む行革をなしとげられるのか。できなければ詐欺だ。全国民が注目している。=おわり
(ジャーナリスト・若林亜紀)2009.12.28